2019年12月27日

相続登記はお済みですか?(2)

弁護士 金田 恒平

 2018年822日のブログ「相続登記はお済みですか」で,「所有者不明土地問題」,すなわち,長期間相続登記がされず現在の所有者が把握できない土地が増加しており,2016年の時点で,日本全国で約410万ヘクタール(九州の面積を上回る)までになっていること,現行法では任意とされている相続登記を義務化することが検討されていることなどについて述べました。

 最近,このような「所有者不明土地問題」を解消するため,政府は,2020年中に,民法や不動産登記法の改正を目指しているとの報道がありました。「所有者不明土地問題」についての,国を挙げての取り組みがクローズアップされています。

 報道によれば,「所有者不明土地問題」を解消するために,現在の法律上の仕組みを大きく変える法改正が,今後,急ピッチで行われる見込みです。

 この法改正は,大きく分けて,「所有者不明土地の発生を防止するための対策」と「所有者不明土地の有効活用を図るための対策」があります。

 

 「所有者不明土地の発生を防止するための対策」としては,
①現在は任意とされている相続登記を義務化し罰則を設けること
②現在は期限が設けられていない遺産分割協議に期限を設けること

などが挙げられます。

 

 「所有者不明土地の有効活用を図るための対策」としては,
①現在は認められていない土地所有権の放棄を可能とする制度を設けること
②共有土地の処分ルールを緩和すること

などが挙げられます。

これらについての概要は次のとおりです。

所有者不明土地の発生を防止するための対策

1 相続登記の義務化,罰則の新設

 不動産を相続した人を明確にするため,被相続人が亡くなった際,相続登記の申請を義務付けることが検討されています。

 被相続人が亡くなった後の一定期間内に登記申請がなされない場合,相続人に対し,10万円以下あるいは5万円以下の罰金を科すという案が検討されています。

 このように相続登記の申請を義務化し,罰則を設ける代わりに,相続登記の申請手続を現在よりも簡易にすることが検討されています。現在,相続登記を申請する際は,被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を法務局に提出するなどの煩雑な手続きが必要とされていますが,被相続人の死亡を証明する戸籍謄本があり,自分が相続人のうちの1人だと証明できれば,相続人全員が揃わなくても簡易に登記申請をすることができるようにする改正案が検討されています。

2 遺産分割協議の期限の新設

 相続人が被相続人の遺産を相続する割合は,民法に規定されている法定相続分(例えば,配偶者は2分の1)によることが原則とされていますが,相続人全員で遺産分割協議を行うことによって,各相続人の法定相続分を変更することが可能です。

 現行法では遺産分割協議に期限がないため,相続人間での話し合いが上手くまとまらず,遺産分割がなされないまま放置されることがあります。

 そこで,相続人間の話し合いの促進を図るために,遺産分割協議の期限を設けることが検討されています。
 具体的には,遺産分割協議の期限を相続開始(被相続人が死亡したとき)から10年とし,その間に遺産分割協議が行われない場合は,各相続人は法定相続分によって相続することが自動的に確定するという案が検討されています。

 

所有者不明土地の有効活用を図るための対策

1 土地所有権の放棄を可能とする制度の創設

 現行法では土地所有権の放棄は認められていません。土地所有権の放棄を認めてしまえば,固定資産税や都市計画税の課税逃れなどのモラルハザードを招くおそれがあるためです。

 そこで,所有権をめぐる紛争がなく,管理も容易にできることなどを条件として,個人が所有権を放棄することを可能にし,放棄された土地は一旦国に帰属させ,地方自治体が希望すれば取得できるようにする仕組みの創設が検討されています。

 

2 共有土地の処分ルールの緩和

 相続で共有となった土地の売却は,共有者全員の承諾がなければ行うことができません。各共有者は自分の持分のみであればそれぞれ単独で売却することが可能ですが,売却できるのは土地全体の一部にとどまるため,買い手が付きにくいというデメリットがあります。
 所有者不明土地の場合,登記簿上の所有者の相続登記をしないうちに,その相続人についても次々に相続が発生してネズミ算式に相続人が増えてゆき,土地の共有者の全容が分からなくなることが多々あります。

 このような共有者の全容が分からない土地について,一部の所有者によって売却を行うことができる仕組みの創設が検討されています。

さいごに

 このように,近い将来,相続登記が義務化され,一定期間内に相続登記を行わないと罰則を科されることになる可能性が高いため,相続登記が未了の方は,速やかに相続登記の申請を行っていただきたいと思います。
 また,遺産分割についても,相続開始後一定期間内に遺産分割協議がなされない場合,法定相続分による相続しかできなくなる可能性が高いため,スピーディーな対応が求められることになります。

 今後,現在よりも迅速な対応が求められることになる相続登記や遺産分割協議についてお悩みの方は,是非,当事務所までご相談ください。

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