「不動産トラブルに備える」

法律ミニ講義 2016年7月

弁護士 河原﨑友太/Yuta KAWARASAKI

1 総論

今回は,どなたでも遭遇する可能性のある不動産にまつわるトラブルに焦点を当てて,その予防策であるとか,解決策といったものをご理解いただければと思っています。

2 不動産のトラブル

不動産のトラブルといっても,多種多様なトラブルが存在しています。
具体的には,貸し借りの問題(賃貸借)や売り買いの問題(売買),お隣さんとの間でトラブルが生じることもありますし,相続が絡んでくることもあります。弁護士が受けるご相談の中でも不動産にまつわる問題というのは件数も多いです。

3 【第1問】賃貸トラブル

では,さっそく本題に入ります。
今回のセミナーでは,問題をたくさん用意させていただきました。
皆さんにも一緒に考えていただきながら,予防策であるとか解決策というのをご理解いただきたいと思います。
では,さっそく。

【第1問-1】
自宅を建てるためにXさんからA土地を借りたYさん。第1回目の土地の賃貸借契約の更新時期になってXさんから更新料として100万円の請求を受けました。果たしてYさんは支払わなければならないのでしょうか。
ちなみに,契約書には,次のような条項があると仮定します。

第〇条 更新の際には借主は貸主に対して更新料を支払う。

さて,いかがでしょうか。
最近更新料のご相談を受ける場面はよくあります。その中で,更新料は支払わなくてもいいという理解をされていらっしゃる方も意外といらっしゃいます。
もともと更新料というのは,慣習的に始まったものと考えられますが,更新の対価であるとか,月額賃料を補完するといった複合的な要素が組み合わさっていると考えられます。
このような要素を含む更新料は,一定の合理性があると考えられており,公の秩序を乱すようなものではない(公序良俗に反しない)とされています。
したがって,契約書に更新料の支払いを約束する条項がある場合には,賃借人には更新料の支払い義務があるということになります。
Xさんの請求に対してYさんはこれを拒むということはできないという結論になろうかと思います。
ただし,気になった方もいらっしゃるかもしれませんが,契約書には更新料が「いくらなのか」という点についての記載がありません。
少なくともYさんには,「100万円の」更新料の支払を約束した事実はないわけです。
そうなると,契約書の曖昧さゆえに,そもそも更新料の支払義務が認められるのかという疑問が生じますし,また,仮に支払い義務を前提にするとしても100万円であるかについては大いに紛争の種になるといえます。
設問の解答はその他の周辺事情によって左右されるということになろうかと思いますが,予防等の観点で言えば,契約書はあいまいさを残さないよう,一義的な定め方をしておくことが望まれます。
また,更新料の定めがないという場合であっても,その後の地主さんとの関係を考えれば,更新料を支払っておくというのも一つの対応かと思います。

では,次に【 第1問-2 】に移ります。原状回復の問題です。
(……中略……)

4 【第2問】相隣関係のトラブル

次に相隣関係のトラブルのお話を少し。
これは,賃貸形式であろうとそうでなかろうとトラブルが多いところです。
代表的なトラブルは騒音ですね。ピアノなどの楽器の音であることもあれば,子どもの走り回る足音のこともありますし,ドアの開け閉めという場合もあります。
土地をめぐる問題で言えば,隣地との境界に関する問題などもあります。
最近では近隣トラブルで事件が起きたりしますので,慎重に対応したいところです。
さて,それでは【第2問-1】と【第2問-2】です。
(1)隣地の樹の枝が伸び,自分の土地に侵入してきた。
(2)隣地の樹の根が伸び,自分の土地に侵入してきた。
切ることが許されるか?

違いは分かりますかね。
(1)は樹の枝が侵入していて,(2)は根っこが侵入しているという事例です。
これはよくクイズなんかでも出題されることがあるのですが皆さん分かりますでしょうか?
どちらも土地の所有権を侵害しているわけですが,できる対応は異なります。
正解ですが,根っこの侵入に対しては勝手に切ることができます。
他方,枝の侵入に対しては勝手に切ることができません。
枝の侵入については,あくまで相手に切らせることを請求することができるだけで,勝手に切っていいという法律にはなっていないのです。
なので,枝が侵入してきちゃった場合には,「枝を切れ」という裁判を起こす必要があるということになります。
これを知らずに勝手に侵入してきた部分を切除するようなことがあれば,逮捕される可能性もあります。
人のものを壊したということで「器物損壊罪」という犯罪になりますし,その際に隣地に入れば不法侵入ということにもなりかねません。民事上も損害賠償請求の対象となりえます。
いずれにしても,お隣さん同士での紛争は気持ちのいいものではありません。
調停手続きなどを利用して,第三者を介した場での話し合いなどがおススメの手続きということになります。
それから,冒頭で申し上げた騒音の問題でも,最近裁判例が出ています。これは上階の子どもの走る音が問題となった事案ですが,50デシベルが計測されたという事情のほかに,上階の人がカーペットを敷く程度の対応しかしていなかったことも考慮されています。
騒音を指摘されると「うちはそんなことしていない!」と言いたくなるところですが,そこはグッと飲み込み,できる対応をとっておくということも必要になります。

5 【第3問】不動産にまつわる相続・基本編

さっそく,問題です。

【第3問-1】
高齢になったAさんには息子が2人いますが,X男は放蕩息子でどこにいるかもわからないことから,Y男に所有する不動産を相続させる遺言書を遺しました。遺産がこの不動産のみの場合,Y男はX男と遺産分割協議をすることなく不動産を取得できるか?

相続の基本中の基本のお話です。
遺言がある場合に協議が必要かどうかということですね。
遺言は,被相続人が自分の財産をどう分けるかという意思表示です。ですから,設問のような場合にこれが実現できないとなれば,遺言の意味がありません。というわけで,正解は○です。
ただし,注意が必要なのは遺留分です。
遺留分とは,相続人の方に最低限保障されている相続分です。この設問の場合には,X男にも4分の1については遺留分で保障されているということになります。
対象遺産が不動産しかない場合,X男が遺留分減殺請求権を行使すれば,不動産の4分の1の登記名義がXに移転することになります。

そこで,次の問いです。
(……以下,省略)

(市民講座でお話しした,この続きは……)

5 【第3問】不動産にまつわる相続・基本編(続き)

2.【第3問-2】遺留分減殺請求と不動産

6 【第4問】相続・発展編

1. 【第4問-1】相続発生から遺産分割までの賃料
2. 【第4問-2】共有物の管理と処分
3. 【第4問-3】不動産の評価

7 【第5問】マンション管理

【第5問-1】管理規約の変更とペット飼育
【第5問-2】規約違反者への対応

8 【第6問】成年後見と不動産

【第6問-1】遺産分割と成年後見
【第6問-2】成年被後見人の不動産処分

以上

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