2016年5月2日

家庭裁判所調査官「陣内さん」

弁護士 河原﨑友太


伊坂幸太郎氏の近著の「サブマリン」を呼んで思ったことを。

 

 

「サブマリン」は家庭裁判所調査官である「陣内さん」を中心とする物語。

 

伊坂幸太郎ファンの方々はご存知のとおり,陣内さんが活躍した「チルドレン」の続編である。

 

家庭裁判所調査官という仕事が注目されることは少ないと思われる。どんな仕事をするのかわからない人がほとんどでは。

 


家庭裁判所調査官は,家事部に所属する者と少年部に所属する者とに分かれる。

 

何をするのかであるが,

 

家事部で言えば,たとえば夫婦間の離婚問題などに際し,

 

「お子さんがどのような生活をしているのか。」

 

「お子さんが両親のことをどう思っているのか。」

 

と言った事柄を調査し,裁判官に報告する。

 


少年部で言えば,少年事件を起こした少年たちの問題点を探り,家庭の問題点を探り,少年の反省を促し,裁判官に報告する。

 

こういった仕事をする人である。

 

 

少年事件の場合には必ず調査官が調査に入る。

 


さて,話は「サブマリン」に戻る。今回は少年部に所属する陣内さんが舞台となっている。

 

「チルドレン」時代から「陣内」なる人物は変人扱いをされている。

 

ところが,読者の選ぶ好きなキャラクターでは常に上位である(たぶん1位)。

 

変人ではあるが魅力に満ちあふれている人物である。

 


たとえば,

 

「人の命は別の命じゃ埋まらねえぞ」

 

こんな具合である。

 

グサッとくる。

 

「時間が和らげない悲しみなどない。が,悲しみはゼロにはならない。」

 

こんな具合である。

 

もちろん,フィクションである。

 


付添人である弁護士は,少年審判の前に調査官が裁判所に提出した報告書を閲覧する。

 

その際に,調査官の能力の高さに驚かされることが多い。

 

審判までのわずか3,4週間のなかで調査官が少年に会う機会は3回前後。

 

その中で,実に多くのことを少年から聞き出している。

 

正直に言って,何でそこまで調べられているの?と思わざるを得ないことも多々ある。

 


経験上,少年から話を聞きだすのはそうたやすくない。

 

語彙が少ない少年も多く,伝えることをあきらめる少年も多い。

 

そこを引き出すことができるのは,きっと聞き手である調査官に魅力があるからなのかもしれない。

 


全国に所在する裁判所のどこかに,「陣内さん」のような調査官がいるかもしれないですよ。

 

……と,どうやって終わったらいいかわからなくなったので,これで文章を結んでみる。

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